在英4年目で考える、イギリスの家庭料理がまずい理由3つ

イギリスの家庭料理がまずい理由
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なぜイギリス=メシマズの国なのか?

イギリスの話で必ずといっても良いくらい出てくるのが、
食事がまずい、ということ。
「イギリス メシマズ」で検索するといくらでも出てくる印象で、
今まで何人にも聞かれた記憶があります、、

在英四年目の今までに経験したことなどから、
レストランの場合だと他国の料理も入ってくるため、
今回は一般的な家庭での料理について、まずい理由を考察したいと思います。

まずい理由1 そもそも選択肢が少なかった

最初に理由として考えられるのは、そもそも彩りを添えるほどの
選択肢が昔からなかったからではないか?ということです。

スーパーマーケットに行って見てみると、
肉は自国産が多いものの、野菜やフルーツは「スペイン産」「ギリシャ産」、、
などの輸入品が数多く並んでいます。
イギリスは、天気が1日のうちで四季があると言われるほど不安定で、
基本的に夏でも暑くなるということがほとんどないため、
トマトなど気温が高くないと採れにくい生鮮食品は、
必然的に他の国からの輸入品が多くなってしまいます。

いつでもUK産なのは人参や玉ねぎ、ジャガイモ程度な感じなので、
流通手段が発達していない時代では、歴史的にもっと限られた食材しか手に入らなかったはずです。
(もしくは今だったら、EUからの物流がとめられたら、根菜類で生き延びる必要があるかも、、)

さらに、イモを主食として、そもそも限られた食材で調理することが多かったイギリスの料理で
代表的なメニューというと、フィッシュアンドチップスやコテージパイ、ジャケットポテトなど、
見た目からして彩りが悪く、美味しそうに見えないことがあげられます。

国営放送のBBCに掲載されているイギリス料理のレシピを見てみても、
基本的に「茶色くない?」と言いたくなってしまうようなメニューが多く、
「彩り」ということはたいして重要視されていないようです。

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まずい理由2 何よりも効率が第一

次に浮かぶのは、
オーブンなどを使って、お皿もなるべくワンプレートで、
手間をかけない!時短をする!という意識がとても強い、ということです。

自身の経験だと、最初にイギリス人の義家族の家で夕飯を食べた時は
いわゆるローストディナーが出てきて、
あまりにも噂で聞いていた通りに味がなかったので、
「大袈裟じゃないんだ!」と、食べ切れるかな、、と思った記憶があります。

ローストディナーは、基本的に茹でたにんじん、グリーンピースかブロッコリー、じゃがいもに、
オーブンで焼いた肉が出てくるイギリスの伝統的?なメニューです。
イギリスのドラマでも、よく食事のシーンで出てきます。

義理の家族の場合、オーブンで焼いた味つけ無しのチキンを添え、
粉末を水でとかした薄めのグレービーソースをかけて食べていて、
あとはそのローストディナーを、ジャガイモが市販のマッシュになったり、
肉を他の種類に変えるだけで週3回食べ、
ほかの日はボロネーゼ、ピザ、、というローテーションをいつも繰り返していました。

また、毎回人参もジャガイモも、とても小さいものを選ぶので、なぜなのか理由を聞いたら、
「茹でる前皮をむくのが面倒だから」とのことでした。

美味しく調理し、かつできれば時短で、というよりは、
本当に、キッチンもなるべく汚さないように、効率が何よりも大事
という価値観なのだという印象を受けました。

ただこれはたまたまこの義家族だけで、ある意味アタリを引いただけかも?とも思ったものの、
そんなステレオタイプ通りの料理で育ってきたパートナーに言わせると、
友達の家に遊びに行ったりしても、今までどこも大体似たようなものだったそうです。

全体としてはどうなのだろう?ということを調べてみると、
イギリスの新聞社The Independentによる記事で、

「4人に1人の人が3つのレシピしか調理できない。
さらに、調理に失敗することが嫌で
新しいものよりも同じメニューばかりくりかえす」

という極めて保守的な面を示す調査結果(2018年)が出ています。

この記事によると、平均でもレパートリーは6種類で、レパートリーとして人気のメニューTOP3が

  1. 1位ソーセージ&マッシュポテト
  2. 2位ビーンズオントースト(トマトに浸かった甘めの豆の缶をトーストにかけたもの)
  3. 3位ボロネーズ

と、TOP3の中に、そもそも料理?なのか疑問なメニューも入ってきています。
工夫をして美味しく調理して食べたい、というより、

すでに知っているメニューの中のみで、いかに時短で効率よく済ませられるか?

という考えがいかにメジャーなのかが読み取れます。

まずい理由3 子どものころからそれが普通

最後に、これが結局一番の原因だと思ったのが、
食への意識が低いのがもともとデフォルトだから、ということです。

改めてイギリス人のパートナーにもどう思うかを聞いてみたところ、

「今までいろんな国からの人に聞かれてきたから、
それは承知なのだけれど、
自分としてはそれが子どもの時から普通だから、
味も、同じものばっかり食べるのも、そんなに気にならないわけ」

と回答をもらい、衝撃を受けました。

それで満足してるから、
色んな国の人がマズくない?と思っても、自虐ジョークのネタになっていても、
見直していくという発想とはそもそもむすびつかない、ということです。

様々な味を受け入れて味わう、という経験があまりない場合は、
大人になっても、食べ物に関して保守的な傾向が出やすいということ。

家庭がそうでも、学校だったら食育というものはどうしているんだろう?
給食はどうなってるのか?と思って、そちらも調べてみました。

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学校による食育

こちらの学校では自分で選んで食べるカフェテリア方式がメインで、
学校の食改革に力を入れているイギリスの有名なシェフ、ジェイミーオリバー財団の調査結果 によると、
何を提供するかを示した国のガイドラインはあるものの、
結局ピザやドーナツ、クッキーなどハイカロリーな食べ物を提供している学校が多いこと。

また、限られている時間なのに長い列を並ぶのがいやで、
特にセカンダリースクール(11-16才)の年齢になると、
ランチをとらずに、別の時間に安いジャンクフードを
買い食いする傾向がみられることが報告されています。

さらに、The Independntの記事(2019年)でも、
何を食べるかのチョイスはまわりの影響も大きく、

健康的な食べ物を選ぶということは
”クールじゃない”とみなされがちなため、選びにくい

という、そもそも日本の給食のスタイルだと想像しにくい事情が紹介されています。

長年イギリスの学校の食改革に取り組んでいるジェイミーオリバーですが、
過去、それを取り上げた
Jamie’s School Dinnersという番組を放送(2005年)した際は、のちに振り返って、
「食に関心が高いのはアッパークラス(上流階級)層やミドルクラス(中流階級)層の話だった。」と、
ワーキングクラス(労働者階級)層の食に対する意識がそもそも低く、
上手くいかなかったことをコメントしています。

2020年の時点で、イギリスではプライマリースクール(5-11才)を卒業するこどもの時点で
1/3はすでに肥満もしくは体重過多となっているデータを見ると、
学校による食育というのは、 まだあまり機能しているとは言えず、
現状は、育つ環境によって左右されがちなことが伺えます。

イギリスの家庭料理がまずい理由 まとめ

実際にはテレビをつけると、日本よりも料理番組は実は数多くある印象で、
「MasterChef」や「Come dine with me」など、
長年やっているシリーズもあったりする中、
なぜそれらを見ながら味のしない同じものを食べていて平気なんだろう?と、
身近な義家族を観察しては今まで疑問に思っていました。

今回色々と調べてみてみた中で感じたのは、
「そもそもの国レベルの全体的な傾向として、食に対する意識というのは低いので、
テレビをちょっと見たくらいで「実行してみよう」ということにも結びつかない」ということ。


結果として、そのデフォルトの意識の低さが、
メシマズの国イメージに繋がっているのかなということを改めて感じました。

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